よってたかって恋ですか?


  “そういう日に かこつけて?”



テレビをつければ、
朝も早よからクリスマスに向けてのCMもにぎやかになりつつあり、
宵の街にはクリスマスに向けてのイルミネーションも始まっていて。
外へと眸を向ければ、
わざわざ郊外へ出掛けなくとも 都内という身近で樹木の紅葉が楽しめて。
カエデの紅葉の、
緑から黄、赤へと移り変わるグラデーションも絶妙で素晴らしいけれど、
息を飲むほどの絶景となると、
そればかりを揃えた並木のイチョウが、
晩秋を迎えて一斉に鮮やかな黄色に染まる光景に尽きるなぁと、
割とご近所にある大通りを見渡して、つくづくと思ったブッダ様。
そういえば昨年は、神宮外苑までわざわざ観に行ったんだっけね、
春の桜の満開爛漫な風景と 双璧かもしれないなぁなんて。
お買い物の帰り道だというのも忘れ、
舗道の車止めの逆U字ポールに腰掛ける格好で、
見事なまでにお揃いの 黄色に染まったイチョウの並木を
しばしの間 のんびり見やって過ごしてしまわれたほど。

 “イエスにも観せたいなぁ…。”

今朝なんて ジョギングに出たら とうとう吐息が白くなってたと、
朝食の場で話したところ、

 『もう そんな寒いんだ。
  あっ、ちゃんと襟巻きとか しているの?』

マスクも買い溜めののチェックしなきゃあねと、
食事中にもかかわらず
箸を持ったまま勢い込んで立ち上がりかかったイエスであり。

 『だってブッダってば何でも我慢しちゃうし、
  どうかすると急な寒いのとか ワクワクしちゃわない?』

 『いやあの、えっと…。////////』

私としては、目覚めたそのときに
懐ろにキミの温みがあるのが理想なのになぁと。
松田さんに頂いた梅漬けが、
一気に はちみつ漬けになり果てないかと思ったほど
甘い甘い言いようまでしてくれて。

 “放っておいたら
  どこまで昇り詰めてくれるやらだったなぁ。/////”

お、お代わり要らない?、あ・そうだ、カブの酢漬けもあるんだったと、
なんとか話を変えさせるのが 大変だったところまで思い出し、
人知れず 頬や耳まで赤くなっていたりして。
どんなに瑣末な話を持ち出しても、

 “気のない片手間で“ふ〜ん”とか言われた覚えは、
  そういや あんまりないなぁ…。////////”

いかに過保護にされているやら、いやいや、感性が同じなだけでと、
誰へのそれだか、口許をうにむにとたわませながらの言い訳をしてみたり。
ブルージーンズにトレーナーという定番の格好の上へ、
袖へのラグラン仕様の切り替えがスポカジぽいそれ、
スタジャン風のジャケットを羽織った背中をうんと延ばして。
そんな可愛らしくも愛しい人の待つ松田ハイツへ帰ろうと
金色の風景に背を向け、立ち上がった如来様だった。





本筋の連載話では長いこと10月末日が続いている間に、
11月が駆け足でやって来ていて、
気がつきゃもう半分以上がとっくに過ぎており。(…自虐?)笑
東北や北海道との比ではないけれど、
東京へも結構な寒さが早々と襲い来たのでと、
我らが聖家でも 満を持してコタツを出したのが つい先日のこと。
暑い寒いに弱いイエスが、
それでもブッダが言い出すまではと
思いの外 頑張ってしまう このところだったようで。
秋の深まりが随分と早かったにもかかわらず、
ブッダの側でも なかなか気がつけぬままになっており。
出先でついついジーンズの腿あたりを
手のひらでこすってた彼を見てハッとし、
慌てて用意した次第だと来て、

 “…私って そうまで鈍かったかなぁ。”

自分は我慢出来たとて、それはそれ。
伴侶様が寒そうだったのへ、すぐさま気づけなければ何にもならぬ。
恋情という微妙なものに翻弄されてる今の今、
そんな不手際に直面したらば、
結果、他でもない自分が海より深く落ち込む運びとなるのだし。
それを置いても 大好きなイエスには、
いつだって快適に朗らかに過ごして欲しい。
過去のあの途轍もない自己犠牲の経緯がある分も含め、
少しでも満たしてあげたいし 幸せでいて欲しいのに。
こんな基本的なところで我慢させたりしてどうするかと、
そんなこんなで、久々に反省しきりとなってしまった
釈迦牟尼様だったのではあるけれど。

 『わあ、嬉しいなvv』

言い出さなくても気がついてくれるなんてと、
素直に全開の笑顔で喜んで見せ、
そのまま早速肩まで浸かる、もとえ、腕を突っ込んだ彼を見て。
おねだりしてしまうの みっともないからどうしよかと思ってたというの
態度の隅っこへ匂わせる彼なのを、
ああやっぱり至らなかったんだと反省モードで感じ入ってしまう
相変わらずの苦行系な受け取りよう、それこそ素早く仕掛かったものの。
いやいや、そんなじゃダメダメと、
自分自身にも ようよう言い聞かせた上で、

 『こっちこそゴメンね。
  もっと早くに、布団とか干し出しとかなきゃだったのに。』

同じ反省するにしても、素直に非を晒しての、
てへvvなんて あっけらかんと構えれば、
何言ってるかなと、ほこほことした笑顔のままでいてくれる。
ついつい引き算してしまう身が、プラス思考に変わるのは、
ゼロより深いところから うんと駆け上がらにゃならないから、あのね?
慣れないうちは微妙に大変だけれども。

 “なんの、思考の尋をより深く広げる修行だと思えば…。”

こらこらこら、ブッダ様。(…う〜ん)
ついのこととて、
その胸元で尊いこぶしをぎゅうと握った伴侶様だったのへ、
気づいてなかったらしいイエス様はといえば、

 「…あのね、ブッダ。////////」

世間様では秋の最後の3連休、
何とかいい天気でよかったねという最初の日が暮れてゆき。
こちらのお宅でも、出したばかりのコタツにあたり、
ほかほかと暖かい宵を過ごしておいでで。
大豆ミートの鷄の唐揚げ風甘酢あんかけと、
かき玉のお澄まし、たたきレンコンの土佐煮に
マカロニサラダとハクサイの浅漬けという
美味しくも温かい夕飯を仲良くいただき。
二人でこなした後片付けの、そのまた片付けを終えて戻って来たブッダへ、
どこか待ち兼ねた様子で声を掛けたヨシュア様。

 「?? なぁに?」

向かい合う位置へ腰を下ろしつつ、
柔らかそうな福耳を揺らして小首を傾げる彼が、
本当に何の気づきもなさそうなものだから。

 「…。/////////」

何へだろうか、先んじて ううと微かに含羞みを感じたらしかったものの。
言い出したらもう引けぬということか、
ポーカーの決めカードでも出すかのように
えいという勢いつきで、すっきりと片付けられた天板の上へ出されたのが、

 「…えっと?」

大きめなイエスの手がそこへと並べたのは、
片やは しっかり堅いサテンだろう生地を折り畳んで
シンプルなリボン状にした、黒地の蝶ネクタイらしい代物で。
もう片やは、5センチちょっとほどの幅でラインストーンもついた
ティアラ風のきらきらした銀の髪飾りに、
純白のレースをフリルにしたミニベールをくっつけたもの。
いかにも…結婚式の主役二人の象徴のような小物が一組、
コタツの上なんていう場所へ唐突に取り出されたその上、

 「どっちがいぃい?//////」
 「えと…はい?」

そうと訊かれて、言い出したお人を見やったならば。
ややうつむき加減になったお顔には、長い髪の陰がかかっていて、
ちょっぴり窺うような上目遣いになって こちらを見やるのが、

 “うあ、それって反則だと思う。////////”

成犬なのに幼い風貌のダックスフントとかチワワとかが、
きょろりと見上げてくるよな可憐な可愛さを、
この精悍そうな男ぶりへ不整合なく乗っけるなんてと。
惚れた弱みで倍増しになってた、
そんな蠱惑を勝手に感じてしまい、ややたじろいだブッダだが、

 「あのね、
  今日ってあのあの、いい夫婦の日なんだって。////////」

しかも3連休の頭だから需要があるんじゃなかろうかなんて、
パーティーグッズでこういうのがあるの、幾つか仕入れたらしい雑貨屋さん。
全く売れなかった訳じゃあないけれど、
個人的なお遊び向きのこういうの、
小さな商店街の店頭コーナーで手に取るのは微妙だったらしく。

 『そういや、イエスさんて カノ女が居るんだよねvv』
 『え? あ、ええっと、いやあのその。/////////』

居るには居るが、事務所公認ではありませんというかと、
大きに焦って見せた隙を衝くよに、

 『まだカップルの段階でも、良いんじゃないの? こういうのvv』

何なら勢いでプロポーズしちゃえと、
いつぞやイエスに砂糖づけの作り方を指南してくれた
雑貨屋の跡継ぎのお嬢さんから背中をバチンと叩かれて、
半額で良いよというサービスまでも していただいたらしく。

 「え?え? それっていつの話?」

 「…今日。
  ほら、ブッダが駅向こうの図書館にも寄って来るって
  買い物に出掛けたでしょ?」

あのお出掛けの後、今日までに返さなきゃなDVDを思い出して、
イエスもイエスで駅前まで出掛けたらしく、
その帰りに捕まっちゃったとのことで。

 「せっかくだから、
  ごっこというか……つけてみない?////////」

 「え? あ、ええっと、いやあのその。/////////」

買うことになったと言っても、
黙って仕舞い込んでても構わないよな代物なのに。
無駄遣いしてと叱られるかもとは思わず、
こやって見せたということは、
“夫婦の日”には乗っかりたいイエスなのがありありしており。
どっちがいぃい?というのは恐らく、
新郎新婦の役柄をどう振り分けようかという問いかけらしく。

 誰へだって公平、
 でも か弱い小さきものへは優先的に手を差し出すかな?

という さして差はない思想の開祖同士であるがゆえ、
それこそ 男尊女卑という傾向偏向もないけれど。

 “…もしかして私、
  ブッダのこと女の子扱いしてたのかなぁ。”

男だからという
自然な感覚で蝶ネクタイを選びかかった手がふと止まり、
じゃあ相手はティアラの方だという格好で残った選択肢へ、
今更ながらに気がついたなんて 重々遅いのかも知れぬ。
いやいや、女の子扱いなんて想いも拠らぬこと、
非力ながらもエスコートする側でいたい、
守りたいと思っているだけなんだけど。
でもでも、それにしては残念な結果も少なくはなくて。

 “だからってこういう訊き方は、
  ブッダに丸投げしちゃったことになるのかなぁ…。”

どっちが良いと問われた如来様は、
まずは“夫婦の”という冠に純情そうに頬を染めてしまわれて。
それから、さっきどさくさ紛れのように訊いた“どっち?”へ
ようやくと把握が至ったようでもあって。

 「え、っとぉ…。///////」

腕力のみならず しっかりしていて頼もしいのも、
何につけ寛容で、懐ろの尋が深くて我慢強いのも、
ブッダのほうが 断然 上なのに違いなく。
ああでもでも、
彼はいつだって優しくて穏やかで嫋やかで。
その厳粛で荘厳で高貴な 誇り高さや気高ささえ、
イエスには まろやかなそれとして向けられているものだから、

 “知らないうちに、思い上がってたんだなぁ…。////////”

それこそが恥ずかしいなぁと、ちょっぴり打ちひしがれつつ、
言っちゃったからにはと、ブッダが選ぶのを待っておれば、

 「………じゃあ、私こっち。////////」

柔らかそうな手が伸びて、
指先で そおと持ち上げたのは、ベールにくるまれたティアラの方。
え?という、やや意外そうなお顔をイエスが上げたれば、

 「だって、あのあの、/////////」

さすがに何か言いたいか、口許をせわしく動かす彼で。

 「クリスマスケーキのサンタを我慢したときは、
  聖痕が開いちゃったイエスなのに。」(原作様 参照…)

 今はそういう気配もないし。だからあのね?
 もしかして、どっちでも良いんだけれど、でもどっちかといえば
 守りたいと思うからこそ、
 蝶ネクタイの側がいいなって思ってるんじゃないのかな。
 でもでも、それじゃあ 私を女の子の側でしょ、
 従う側でしょなんて思っているのかってことになるのが
 それは全然違くってと言いたいしで……。

 「あ…。/////////」

ブッダの側としても、断言はしにくい感覚的なことなのだろに、
それでも言葉を尽くしてくれてる。

 判っているよ? こう思っている上でなんでしょ?

そんな相変わらずの律義さが、何とも嬉しかったイエス様。

 「何で?何で? 凄いっ。」

 私の思ってた、でもどう言えばいいんだろっていう
 とっても微妙なところまで、
 そりゃあ細かく言い当てちゃった! 何で判るの?

…という心情なんだろうなというのが ありあり判る、
喜色満面なお顔になってしまった彼であり。
とはいえ、やっぱり言い表すのは無理だったか、
鳥がその羽根をぶわと膨らませ、
でも無言のままにするすると静めてしまうよに。
やや いからせかかった肩をすとんと降ろすと、

 「ありがとね。
  私がこっちだと似合わないものねぇ。///////」

照れ臭そうに言って、肩をすくめる愛しのお人だったので。

 “………いや、
  似合わないとは思わなかったけどなぁ。///////”

口許や顎にお髭があろうと、
眼窩が深くて頬骨がちょっと高かろと。
何とも愛嬌のある この笑顔なんだものと、
そこはちょっぴり否定したかった釈迦牟尼様だったのは
この際 内緒の内緒なお話で。(笑)

 「じゃあvv」

わざわざコタツから出るとブッダの傍らまで立ってゆき、
すぐの隣という間近へ膝立ちになる。
え?え?え?と そんな彼なの目で追って、
真隣りへ来たのへ合わせるよう、
こちらもコタツから正座していた膝を出して向かい合えば。

 「貸してね。」

まずはコタツへ腕を伸べて、
短めのコームタイプになってたティアラのほう、
ブッダの指先からそおと取り上げて。
あらためて両手で恭しく捧げ持ったそのまま、
こちらの頭上へと持ち上げて見せるイエスで。

 “あ…。/////////”

それはさながら、本当の結婚式の中での儀式のよう。
彼の長い腕の温みが、
頬やこめかみへ触れそうなほどの間近まで延ばされて。
そのまま悪戯っぽく抱きしめられちゃうんじゃないかというよな、
(それでも問題はないけれど)なんていう
甘いドキドキに胸がいっぱいになる中で、

 「じっとしててね。」

肉髷の裾あたりの螺髪へ ゆっくりそおっと
小さなティアラを留めたれば。
レースが花のように広がったのが、
ちょっとしたシニヨンへの飾りのようで何とも愛らしく。
自分とは打って変わって、
それはすべらかで するんとした頬や
潤みの強い、大きな深色の双眸をした
瑞々しい風貌の如来様には不思議としっくり似合って見えたの、
何でかこっちまで照れ臭くなり、

 「何かセレモニーみたいだねvv」

もう指輪は済ませてたから順番がおかしいかななんて、
屈託なく微笑ったイエスだが。

 「え…?//////////」

彼にしてみれば何て腹蔵なく口にしたのだろうにね。
恭しくも構えられた中での この一連の儀式にあてられ、
しかもそんな、晴れがましいことまで言われちゃった日にゃあ、

 “えっと、あのあの…。/////////”

 今のってまるで、
 イエスから傅(かしず)かれたような体裁じゃあなかった?
 え? え? 神の子に そんな滸がましいことさせちゃったの?
 従わせるのって私の側がなの?
 女性は大人しくついて来なさいじゃあなくて?
 西洋じゃあ そういう順番なの?
 私こんな、あのその、
 甘やかされるにも ほどがあるってゆうか……////////

こちらもこちらで、
想いも拠らない運びにドキドキしちゃったその胸のうち、
そんな一言でとどめとされたようなもの。

 「え? あれ…?//////////」

真っ赤になったブッダがちょっぴりお顔を伏せた気がして。
あ、いけないこと言っちゃったかな、
調子に乗ってしまってごめんねと
頭を掻き掻き 言いかかったイエスへも目がけるように。
釈迦牟尼様の螺髪が弾け、
深色のつややかで豊かな長い髪が ぶわりとあふれたのは、
もはやウチでは定番の、でもでも もしかして久々かも知れないお約束。

 「ブッダ、ごめんね。落ち着いて?」
 「〜〜。///////////」

何とか宥めるつもりだったか、
間近だったそのまま、腕を伸べたイエスから、
あふれた髪ごと しっかと懐ろへと迎え入れられたものだから。
尚ますますの“や〜ん、恥ずかしい〜〜///////////”で
いっぱいいっぱいになってしまったブッダだったのは言うまでもなくて。
アパート周辺へ甘い甘い芳香が垂れ込めて、
ご近所のどちらのお宅の晩ご飯も ずんと風味がよく増して、
元気のなかった椿やサザンカの茂みに瑞々しさが増し、
星空が一際輝いて見えたのは……、


 いやいやいや、
 それは 皆さんの日頃の行いが良かったからだと
 思いますよ? ええはい。





     〜Fine〜  14.11.20.


  *本当は11月22日なので、
   フライングもはなはだしいですが、
   当日はばたばたするかもしれないので、
   手が空いた今 書いておこうと思って綴った代物です。
   いつまでハロウィンの話を書いているやらで申し訳なく、
   それより何より、
   せっかく好きなあなたと寄り添い合っても文句のなかろう
   寒さひとしおの季節になってるというに、
   そういう傾向の文章が綴れないことに
   もーりん当人が焦れたというか。(笑)

   それにつけましても……。
   最近制定された記念日のほとんどは、
   企業による販売促進のためのものかも知れませんが、
   何をするにもシャイな日本人なのでと、
   告白やイベントへの えいと思い切るための言い訳に出来るよう、
   設けられたものという解釈も出来。
   ならば、ノらにゃあ損々かも知れませんネvv
   12月に入って忙しくなる前に、寒さが増すその前に、
   どちら様も、大切な人と温かくお過ごしくださいますようにvv

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

拍手レスもこちらvv


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